微生物科学技術研究所

微生物の新たな機能を探求し 未来の技術を築く

キリンの発酵・バイオテクノロジーは、微生物の力を活かすことから始まりました。微生物科学技術研究所は、長年、微生物を使った健康食品や医薬品原料の安全・安定・高品質なものづくりを通じて培った技術を活かし、酒類・飲料・ヘルスサイエンス領域の事業を支えています。さらに、微生物が秘める新たな可能性を探求し、地球規模の課題解決につながる新たな価値の創出にも挑戦。微生物の力で、人と社会のより良い未来づくりに貢献します。

  • 育種、培養、精製、廃液処理、分析技術

創りたい未来

微生物科学技術研究所が研究や技術を通してつくろうとしている未来の一部をご紹介します。
私たちは、微生物が持つ可能性を引き出し、環境に調和したものづくりを実現する技術の進化に取り組んでいます。さらに、酒類醸造やアミノ酸発酵に続く革新技術を創出し、持続可能な社会の実現に資する製品やサービスを生み出していきます。

人の一生を支える健康の科学

子どもたちの健やかな成長から、いきいきとした人生の実現まで。キリンは、発酵・バイオテクノロジーを基盤に、免疫や老化の研究を通じて、人の一生に寄り添う健康の科学を追究しています。

限りある資源を生かし、持続可能な未来へ

限りある資源を、次の世代へどうつないでいくか。それは、ものづくりに携わる企業の大切な責任です。キリンは容器素材やリサイクル技術に加え、副産物や廃棄物の有効利用など、資源を循環させる研究を進めています。資源を無駄なく生かしきり、持続可能な未来を目指しています。

データと科学で創造を加速する

データは、新たな価値を生み出す可能性を秘めています。キリンはAIやデータ解析、高度分析を活用し、研究やものづくりの新たな可能性を切り拓いています。データから新たな発見を見出し、人々の期待を超える価値を生み出す未来を目指しています。

主な強み技術

バイオものづくりに必要な「育種」「培養」「精製」「分析」「環境(廃液処理)」の全工程において一貫した研究を行い、高度な知見と技術を保有しています。長年の蓄積と最先端技術を駆使し、微生物の新機能を見出す基礎研究、それをプロセス化する応用研究、製品の量産化に直結するスケールアップが強みです。

微生物の可能性を、実用化まで一貫して磨き上げる技術

微生物が持つ可能性を見つけ出し、実際のものづくりにつなげる技術です。

微生物科学技術研究所では、有用な微生物や酵素の探索から、育種(合成生物学・ゲノム編集)による生産菌の開発、その能力を最大限に引き出す培養プロセスの設計、さらに目的成分の精製や工業生産に向けたスケールアップまで、一貫した研究開発を行っています。
研究室と工場では求められる条件が異なるため、実用化にはさまざまな工夫が必要です。私たちは長年培ってきた知見を活かしながら、育種・培養・精製の各技術分野を連携させ、微生物が持つ可能性を最大限に引き出す研究開発を進めています。各工程で得られた知見を互いにフィードバックしながら改良を重ねることで、研究成果を高品質で効率的なものづくりへとつなげています。

医薬品製造で培った、ものづくりの品質と安全を支える高度分析技術

製品の品質や安全性を支えるため、成分を正確に見極める技術です。

微生物科学技術研究所では、医薬品製造で培った高度な分析技術と分析機器を活用し、原料から製造工程中の半製品、最終製品まで幅広い分析を行っています。微生物を活用したものづくりでは、目的とする成分以外にもたくさんの副生成物が含まれる可能性があるため、既知の成分だけでなく未知の不純物についても高精度に把握することが求められます。
私たちは、成分の特定や定量のための分析法開発と機器分析の知見を活かし、製品の品質や安全性の向上に貢献しています。現在はキリングループの高度分析センターとしての役割も担い、研究所や事業領域を超えてさまざまな製品・素材の分析を支えています。

立地や条件に応じた廃液処理設備・プロセスを構築する技術

製造活動で発生する廃液を、微生物の力を活用して適切に浄化する技術です。

キリングループの工場では、製造工程で発生する有機物や窒素、リンを含む廃液を、各地域の規制や設備条件に応じて処理しています。廃液の組成や季節によって処理条件は大きく変化するため、安定した処理を実現するには高度な知見が必要です。
微生物科学技術研究所では、キリングループで唯一、実際の処理設備を再現したスケールダウン試験系を活用し、廃液処理プロセスの研究開発を行っています。処理性能を左右する微生物の働きを解析しながら、立地や条件に応じた最適な処理プロセスの構築や、処理効率の向上にむけた新たな技術開発に取り組んでいます。

製品の一生を通した環境影響を可視化する技術

近年、環境への配慮に対する社会的な関心が高まる中で、製品やサービスについても環境影響を把握し、説明することが求められています。微生物科学技術研究所では、原料調達から製造、流通、使用、廃棄、リサイクルまでのライフサイクル全体を対象に、資源やエネルギーの使用量、温室効果ガス排出量などを定量的に評価しています。

こうした評価により、製品の環境影響を可視化するだけでなく、環境負荷低減に向けた課題の抽出や、新たな技術開発・改善活動にも活用しています。キリングループのさまざまな製品やサービスを対象に環境影響評価を行い、より持続可能なものづくりの実現に貢献していきます。

風土、特徴

協和発酵バイオ(株)の研究開発部門を前身とし、60年以上にわたり発酵生産プロセスと向き合ってきた研究所です。アミノ酸発酵(代謝制御発酵)という微生物による革新技術を生み出した歴史を持ち、その精神は現在の研究活動にも受け継がれています。
協和発酵バイオ山口事業所に隣接し、多くの研究員が「研究成果を実際のものづくりにつなげる」ことに強い誇りと責任感を持っています。培養・精製・分析・廃液処理・LCAなどの専門技術を活かし、事業領域や研究所の枠を越えた共同研究や課題解決にも積極的に取り組んでいます。

一方で、これまで培ってきた技術にとどまることなく、新たな研究領域や事業機会の創出にも挑戦しています。テーマ創発活動を通じて、培ってきた技術を強みに、従来のものづくりの枠を越えた研究テーマを創出し、未知の領域へ挑戦しています。
研究員は20〜30代を中心に、微生物学、化学工学、有機化学、薬学、生物工学など多様な専門性を持っています。日常的に分野を越えたコミュニケーションが活発に行われており、互いの知識や経験を活かしながら研究を進めています。また、国内外の研究拠点との連携や技術交流も行いながら、新たな視点や発想を取り入れた研究開発に取り組んでいます。

多彩で専門的な研究員たちがコミュニケーションをとり、協力してプロジェクトを進めています。

インタビュー

微生物科学技術研究所には不屈の意志と柔軟な応用力をもつ、熱意に満ちた研究員がいます。やりがいや想いを聞きました。

インタビュー

微生物科学技術研究所には不屈の意志と柔軟な応用力をもつ、熱意に満ちた研究員がいます。やりがいや想いを聞きました。

グローバルに活躍できる環境で成長を実感

藤永 凌矢

地元山口県出身、入社3年目の藤永凌矢さんは、生物学のバックグラウンドを活かして培養スケールアップを担当。ラボにとどまらず、社外、海外の製造現場に赴いて、キャリアの幅を広げています。

地元山口県出身、入社3年目の藤永凌矢さんは、専門の細胞生物学を生かして培養スケールアップを担当。ラボにとどまらず、社外、海外の製造現場に赴いて、キャリアの幅を広げています。

「技術の力で世の中のためになる仕事をしたい」とバイオものづくりを志した藤永さん。当初から海外を視野に入れ、グローバルな事業内容に魅力を感じて入社を決めました。「山口は自然が豊かで、食べものもおいしい。実験設備が充実し、製造現場も近い恵まれた環境で、思いきり研究に打ち込めています」。仕事の醍醐味は「自分で考えた製造方法を現場の製造スケールまで持っていき、上市までを体感できること」。海外で働くチャンスも1年目に訪れました。タイ工場の試験製造のため現地に滞在。「英語でやりとりしながら、現地の製造スタッフの人たちが理解できる表現で、試験の目的や自分たちの意思を明確に伝える必要があると痛感しました。机上の空論ではなく、現場で現物を観察し、現実を認識して課題解決を図ることが重要。大きな気づきでした」。コミュニケーションもものづくりの一部。奥深さを再認識した藤永さんは、他企業の工場への技術移管も経験。「いろいろな人と連携して仕事をするうち、より積極的に自分から声をかけられるようになりました」。周囲を巻き込みながら、夢に向かうスピードは加速しています。

電子工学からバイオに転身―未知の精製法に挑む

岩田 直幸

いかに不純物を取り除き、純度の高い有用成分を得るか。新たな精製法開発に取り組む岩田直幸さんは、入社からわずか2年で特許技術を生み出しました。

いかに不純物を取り除き、純度の高い有用成分を得るか。新たな精製法開発に取り組む岩田直幸さんは、入社からわずか2年で特許技術を生み出しました。

実は博士号をもつ、電子工学の専門家。「大学ではカミナリを用いた殺菌方法を研究していました。祖父の病を機に、自分の手でつくった健康食品成分を世の中に届けたいとの思いが強まり、入社を決めました」。決め手はB to B事業。精製した成分がさまざまな企業の製品に使われることから、より広く健康に寄与できると考えたのです。入社1年目からアミノ酸の精製法開発を担当するも不純物を取りきれず、できたのは黒い結晶ばかり。心が折れそうになりながらも、持ち前の論理性を武器に製法を何度も試み、金属が原因だと突き止め除去に成功。「タンクから白い結晶が出てきたときは感無量で、自分たちにしかできないことを成し遂げたと強い自信になりました」。3種のイオン交換樹脂を組み合わせた精製法は例がなく、独自技術として特許出願。多様な専門性を持つ同僚たちと連携しながら、今後は精製法開発に電子工学の視点も取り入れたいと語ります。「わからないものを解明していく喜びを、製造スケールで体感できるのがバイオ研の醍醐味」と語る岩田さんのモットーは「自分に負けない」。新手法開発がより安心な製品づくりにつながると信じ、前進を続けます。

「科学の目」で物質を特定―分析化学で社会の力に

大井 博晃

高難度の分析対象物を解明し、学会発表など優れた成果を挙げている大井博晃さん。各種機器を用いた分析をはじめ、分析法の開発、未知有機化合物の構造推定に力を発揮しています。

高難度の分析対象物を解明し、学会発表など優れた成果を挙げている大井博晃さん。各種機器を用いた分析をはじめ、分析法の開発、未知有機化合物の構造推定に力を発揮しています。

専門は有機化学。思い描いたモデルの分子づくりに打ち込んでいた学生時代に分析化学に魅了され、研究員の道を選びました。「目に見えない小さなものを“科学の目”で見ることで、社会の力になれる。そこに面白さとやりがいを感じます」。研究室には分析機器がそろい、中には原子1つ1つを識別できる機器も。入社直後から取り組んだヒトミルクオリゴ糖(HMO)の分析では手法を一から検討し、一般的に定性分析に使われるNMRを定量分析に使用。分子構造を解明するとともに正確に含量を算出する手法の確立に成功し、2022年の日本定量NMR研究会で発表の舞台に立ちました。現在も挑戦の日々。「微生物がつくり出す物質は見当のつかないものが少なくありません。社内各所から依頼される分析対象はさまざまで、多糖など識別が難しいものも多く、注意深く特定しなければすぐに辻褄が合わなくなってしまいます」。しかし、困難にもひるみません。「研究はわからないことがあって当たり前。都度勉強し、チーム全員で力を合わせて立ち向かいます」 自身の強みは、有機化合物で難しいとされる水溶性化合物の定性・定量分析。今後も科学の目を武器に、未知の解明に挑みます。

環境を汚さないバイオものづくりを世界へ

鈴木 拓磨

高校生のとき東日本大震災を目の当たりにし、環境研究を志した鈴木拓磨さん。水質を浄化する微生物の研究や、廃液処理に最適な設備の構築に取り組み、国内外で活躍しています。

高校生のとき東日本大震災を目の当たりにし、環境研究を志した鈴木拓磨さん。水質を浄化する微生物の研究や、廃液処理に最適な設備の構築に取り組み、国内外で活躍しています。

「いくら素晴らしい技術でモノをつくっても、後のことまでしっかり研究しなければ、人の生活を壊すことになる。その思いが、常に念頭にあります」と話す鈴木さん。大学でテーマに選んだのは、環境に関わる微生物。「微生物の99%は未発見といわれます。微生物研究でノーベル賞受賞者も出ており、可能性を感じました」。最後まで一貫して研究を行うバイオ研は、まさに志と合致。「工場の廃液は、一つの市と同じくらいの廃液負荷になります。膨大な量の廃液処理を研究の力で解決するのが私たちの使命。規模が大きいだけに一つの計算ミスも許されません」 国内のみならず、入社3年目にはタイの新設工場を担当。「法律が異なるうえ、気候も大きく違います。想定とは別の微生物が生育する可能性があり、導入後も現地スタッフと試行錯誤を重ねて細かく調整しました」。さまざまな手法の組み合わせが得意で、悩むより前に進むタイプという鈴木さん。「真に豊かな国には、豊かな環境があるはずです。環境を守る大切さと責任を、企業から発信し続けます」

アクセス

微生物科学技術研究所

〒747-8522
山口県防府市協和町1-1