バイオプロセス技術研究所

バイオものづくりの基盤を築き 未来を拓く

微生物を活用したものづくりを安全・安心・安定的に行うには、規格や規制に適合し、かつ環境に負荷をかけない効率的な発酵生産プロセスの構築が不可欠です。バイオプロセス技術研究所は、健康食品、医薬品原料の分野で培った4つの研究領域(培養・精製・分析・廃液処理)の技術を結集し、発展させることで、製造現場に直結する最適なプロセスを構築・実装。ヘルスサイエンス領域の持続可能な成長に貢献するとともに、高品質なバイオものづくりを幅広く実現します。

創りたい未来

バイオプロセス技術研究所が研究や技術を通してつくろうとしている未来の一部をご紹介します。
ヘルスサイエンス領域で、より多くの人々を健康にする貢献とともに、バイオエコノミー実現を進める新たな領域での展開も目指しています。
バイオものづくりは環境に調和した製造法であり、微生物で生産、培養液から精製するだけでなく、製造工程で見つかる新成分、未知成分や夾雑物の高度分析や、製造で発生する廃液を微生物を用いて効率的に処理する研究も含めて、トータルでバイオものづくりを最適化する技術開発に取り組み、社会課題解決につながる新たな価値の創出に挑戦しています。

主な強み技術

バイオものづくりに必要な「培養」「精製」「分析」「環境(廃液処理)」の全工程において一貫した研究を行い、高度な知見と技術を保有しています。長年の蓄積と最先端技術を駆使し、幅広いニーズに対応する応用開発、製品の量産化に直結するスケールアップが強みです。

製造現場に即した培養スケールアップ

現場の製造設備に合わせて微生物の培養プロセスを最適化する技術です。

発酵生産を実現するには、ラボで開発した微生物培養プロセスを、現場の製造設備の特性に合わせて適切にスケールアップする必要があります。スケールアップには、発酵槽内の混合性、温度制御、酸素供給など多くの課題があります。過去の知見や最新技術を活用することで、これらの課題を解決し、安定かつ生産性の高い培養プロセス構築を可能にしています。研究所内には、数リットル〜数十リットル規模のジャーファーメンターから数キロリットル規模のタンクまで幅広いパイロット設備があり、日々さまざまな培養試験を行っています。

健康食品成分や医薬品成分の高度精製

微生物に発酵生産させたアミノ酸等の健康食品成分や医薬品成分を、微生物やその他の不純物から分離し、高い純度で取り出す技術です。

菌体分離、イオン交換樹脂、脱色、晶析(結晶化)、濃縮、結晶分離、粉砕までに関連した多様な精製技術を開発しており、高い収率で、かつヒトが摂取しても安全・安心なレベルまで不純物を取り除くことができます。中でも晶析(結晶化)技術においては、アミノ酸、ペプチド、核酸、ポリフェノール、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)の新規結晶化手法を開発し、多数の特許を取得しています。

多様な製造サンプルと研究サンプルの、定性・定量分析

培養や精製工程で得られた化合物が目的のものか、その中に含まれる物質がどんなものか、どのくらい入っているかなどを調べる技術です。

発酵生産物の中には、目的とする成分以外にもたくさんの副生成物が含まれます。目的物質と酷似した構造のものや、想定外のものも頻出します。それらが何か、どの程度含まれているかなどをLC-MSやNMRをはじめとする各種分析機器を用いて特定します。ICP-MSなどの無機分析では、含まれる元素が安全な基準を満たしているかを研究段階から監視することで、製品の安全性に寄与しています。幅広い分析対象品目に対応できる分析力、研究所内で完結できる迅速な分析体制も強みです。

立地や条件に応じた廃液処理設備・プロセスの考案および構築

製造によって生成された目的産物以外の廃液を、有機物、窒素、リンなどの排出規制を遵守して無害化し、適切に処理する技術です。

工場から出る廃液を、微生物が生息する排水処理槽で分解し、国が定める基準値以下に無害化して海に放流します。微生物が処理しやすい廃液の量や種類はさまざまで、気候や温度などの条件にも左右されます。個々の条件や立地に応じて、最適な処理方法や設備を立案。ラボでの検討を経てスケールアップし、効率的な実機を導入します。安全・安定・安価な運転を維持するため、運転導入後も現場管理を継続し、各拠点にマッチした運転方法へと昇華させていきます。

風土、特徴

協和発酵バイオ(株)の研究開発部門を前身とし、60年以上、発酵生産プロセスに向き合ってきた研究所です。B to Bで原料をつくってきた歴史があり、バイオものづくりの原点ともいえる高い技術力を誇ります。培養から精製、分析、廃液処理まで研究所内で完結でき、ラボスケールからパイロットスケールまでのスケールアップ試験に対応が可能。研究所で構築したプロセスがそのまま製造現場に移管されるため、製造の安定性や製品の安全性を科学的に証明する社会的使命を負っています。理論上ほぼ間違いないと思われる事象もラボで実験・検証を実施し、「間違いない・問題ない」を実証します。

研究員は20〜30代が中心で、微生物学、化学工学、有機化学、薬学、生物工学、電子工学、構造解析学など多彩な専門性をもっています。互いに協力して仕事を進める機会が多いため、日頃から自然にコミュニケーションが生まれています。所在地の山口県防府市は海と山に囲まれた自然豊かな環境で、のびのびと研究に打ち込んでいます。休日にはバーベキューや釣り、温泉めぐりを楽しむ研究員も多く、フットサルやバドミントンなどのスポーツも盛んです。海外の研究拠点との関わりもあります。

多彩で専門的な研究員たちがコミュニケーションをとり、協力してプロジェクトを進めています。

インタビュー

バイオプロセス技術研究所には不屈の意志と柔軟な応用力をもつ、熱意に満ちた研究員がいます。やりがいや想いを聞きました。

インタビュー

バイオプロセス技術研究所には不屈の意志と柔軟な応用力をもつ、熱意に満ちた研究員がいます。やりがいや想いを聞きました。

グローバルに活躍できる環境で成長を実感

藤永 凌矢

地元山口県出身、入社3年目の藤永凌矢さんは、生物学のバックグラウンドを活かして培養スケールアップを担当。ラボにとどまらず、社外、海外の製造現場に赴いて、キャリアの幅を広げています。

地元山口県出身、入社3年目の藤永凌矢さんは、専門の細胞生物学を生かして培養スケールアップを担当。ラボにとどまらず、社外、海外の製造現場に赴いて、キャリアの幅を広げています。

「技術の力で世の中のためになる仕事をしたい」とバイオものづくりを志した藤永さん。当初から海外を視野に入れ、グローバルな事業内容に魅力を感じて入社を決めました。「山口は自然が豊かで、食べものもおいしい。実験設備が充実し、製造現場も近い恵まれた環境で、思いきり研究に打ち込めています」。仕事の醍醐味は「自分で考えた製造方法を現場の製造スケールまで持っていき、上市までを体感できること」。海外で働くチャンスも1年目に訪れました。タイ工場の試験製造のため現地に滞在。「英語でやりとりしながら、現地の製造スタッフの人たちが理解できる表現で、試験の目的や自分たちの意思を明確に伝える必要があると痛感しました。机上の空論ではなく、現場で現物を観察し、現実を認識して課題解決を図ることが重要。大きな気づきでした」。コミュニケーションもものづくりの一部。奥深さを再認識した藤永さんは、他企業の工場への技術移管も経験。「いろいろな人と連携して仕事をするうち、より積極的に自分から声をかけられるようになりました」。周囲を巻き込みながら、夢に向かうスピードは加速しています。

電子工学からバイオに転身―未知の精製法に挑む

岩田 直幸

いかに不純物を取り除き、純度の高い有用成分を得るか。新たな精製法開発に取り組む岩田直幸さんは、入社からわずか2年で特許技術を生み出しました。

いかに不純物を取り除き、純度の高い有用成分を得るか。新たな精製法開発に取り組む岩田直幸さんは、入社からわずか2年で特許技術を生み出しました。

実は博士号をもつ、電子工学の専門家。「大学ではカミナリを用いた殺菌方法を研究していました。祖父の病を機に、自分の手でつくった健康食品成分を世の中に届けたいとの思いが強まり、入社を決めました」。決め手はB to B事業。精製した成分がさまざまな企業の製品に使われることから、より広く健康に寄与できると考えたのです。入社1年目からアミノ酸の精製法開発を担当するも不純物を取りきれず、できたのは黒い結晶ばかり。心が折れそうになりながらも、持ち前の論理性を武器に製法を何度も試み、金属が原因だと突き止め除去に成功。「タンクから白い結晶が出てきたときは感無量で、自分たちにしかできないことを成し遂げたと強い自信になりました」。3種のイオン交換樹脂を組み合わせた精製法は例がなく、独自技術として特許出願。多様な専門性を持つ同僚たちと連携しながら、今後は精製法開発に電子工学の視点も取り入れたいと語ります。「わからないものを解明していく喜びを、製造スケールで体感できるのがバイオ研の醍醐味」と語る岩田さんのモットーは「自分に負けない」。新手法開発がより安心な製品づくりにつながると信じ、前進を続けます。

「分子レベルの目」で物質を特定―分析科学で社会の力に

大井 博晃

高難度の分析対象物を解明し、学会発表など優れた成果を挙げている大井博晃さん。各種機器を用いた分析をはじめ、分析法の開発、未知有機化合物の構造推定に力を発揮しています。

高難度の分析対象物を解明し、学会発表など優れた成果を挙げている大井博晃さん。各種機器を用いた分析をはじめ、分析法の開発、未知有機化合物の構造推定に力を発揮しています。

専門は有機化学。思い描いたモデルの分子づくりに打ち込んでいた学生時代に分析科学に魅了され、研究員の道を選びました。「目に見えない小さなものを“分子レベルの目”で見ることで、社会の力になれる。そこに面白さとやりがいを感じます」。研究室には分析機器がそろい、中には原子1つ1つを識別できる機器も。入社直後から取り組んだヒトミルクオリゴ糖(HMO)の分析では手法を一から検討し、一般的に定性分析に使われるNMRを定量分析に使用。分子を解明するとともに正確な含量の算出に成功し、2022年の日本定量NMR研究会で発表の舞台に立ちました。現在も挑戦の日々。「微生物がつくり出す物質は見当のつかないものが少なくありません。社内内各所から依頼される分析対象はさまざまで、多糖など識別が難しいものも多く、注意深く特定しなければすぐに辻褄が合わなくなってしまいます」。しかし、困難にもひるみません。「研究はわからないことがあって当たり前。都度勉強し、チーム全員で力を合わせて立ち向かいます」 自身の強みは、有機化合物で難しいとされる水溶性化合物の定性・定量分析。今後も分子レベルの目を武器に、未知の解明に挑みます。

環境を汚さないバイオものづくりを世界へ

鈴木 拓磨

高校生のとき東日本大震災を目の当たりにし、環境研究を志した鈴木拓磨さん。水質を浄化する微生物の研究や、廃液処理に最適な設備の構築に取り組み、国内外で活躍しています。

高校生のとき東日本大震災を目の当たりにし、環境研究を志した鈴木拓磨さん。水質を浄化する微生物の研究や、廃液処理に最適な設備の構築に取り組み、国内外で活躍しています。

「いくら素晴らしい技術でモノをつくっても、後のことまでしっかり研究しなければ、人の生活を壊すことになる。その思いが、常に念頭にあります」と話す鈴木さん。大学でテーマに選んだのは、環境に関わる微生物。「微生物の99%は未発見といわれます。微生物研究でノーベル賞受賞者も出ており、可能性を感じました」。最後まで一貫して研究を行うバイオ研は、まさに志と合致。「工場の廃液は、一つの市と同じくらいの廃液負荷になります。膨大な量の廃液処理を研究の力で解決するのが私たちの使命。規模が大きいだけに一つの計算ミスも許されません」 国内のみならず、入社3年目にはタイの新設工場を担当。「法律が異なるうえ、気候も大きく違います。想定とは別の微生物が生育する可能性があり、導入後も現地スタッフと試行錯誤を重ねて細かく調整しました」。さまざまな手法の組み合わせが得意で、悩むより前に進むタイプという鈴木さん。「真に豊かな国には、豊かな環境があるはずです。環境を守る大切さと責任を、企業から発信し続けます」

アクセス

バイオプロセス技術研究所

〒747-8522
山口県防府市協和町1-1