レポート

大麦搗精粕(とうせいかす)を食べると、牛の免疫活性が高まる

  • 健康機能性素材探索・評価

牛の飼料に使われる「大麦搗精粕」を食べさせると免疫賦活効果があることを、ホルスタイン種の牛で確認しました

乳牛などの家畜の病気予防や抗生物質の低減は、酪農業にとって大きな課題となっています。キリンホールディングスのフロンティア技術研究所は、家畜飼料として利用されている大麦搗精粕(とうせいかす)が家畜の健康維持に貢献できるのではないかと考え、東京大学農学生命科学研究科附属牧場との共同研究を行いました。そして、大麦穀皮由来のリグニン配糖体および大麦搗精粕に、牛の免疫活性を高める効果があることを発見しました。

大麦搗精粕、リグニン配糖体とは

大麦搗精粕は、主に発泡酒製造時に生じる副産物です。牛をはじめとする家畜飼料に多く利用されており、セルロース、リグニンなどから構成されています。リグニンは食物繊維の一種で、地球上でセルロースに次いで多いバイオマス(生物由来の資源)ですが、産業への利用は限定的で、有効利用が課題となっています。大麦搗精粕からリグニン配糖体を人工的に抽出するには、下の図のようなプロセスが必要になります。フロンティア技術研究所は、このようにして抽出したリグニン配糖体が、動物(マウス)で免疫賦活効果を示すことをすでに確認していますが、今回新たに、東京大学との共同研究で、牛の免疫賦活効果も確認しました。

リグニン配糖体を牛に投与

実験では、まず、大麦搗精粕から抽出したリグニン配糖体を、ホルスタイン種の牛に筋肉内注射し、血中サイトカインを測定しました。すると、下のグラフの通り、サイトカインの一種である血中TNF-α濃度の増加が確認されました。TNFは、体内における炎症反応・抗体産生促進を担い、感染防御に関与するものです。

ホルスタイン種の牛(3~7年齢)にリグニン配糖体を筋肉内注射したところ、300µg/kgを投与した3時間後に、血中TNF-αが上昇しました。

大麦搗精粕をそのまま食べさせても免疫賦活が起こるか

次に、ウシに粉砕した大麦搗精粕をそのまま食べさせる実験を行いました。というのも、リグニン配糖体は、上記のとおり、セルラーゼ処理後に有機溶媒で抽出して作りますが、コストが高くつくのです。しかし、牛を含む反芻動物の胃の中には、もともとセルラーゼを産生する細菌が存在しているので、人工的に抽出する必要はなく、大麦搗精粕そのものを食べさせても効果があるのではないかと考えたわけです。その結果、下のグラフの通り、唾液中に、抗体の一種である免疫グロブリンIgA(主に粘膜免疫を担う)とIgM(主に初期感染防御を担う)が増加することを確認しました。つまり、セルラーゼ処理をせず、粉砕した大麦搗精粕をそのまま食べさせても、牛の免疫賦活が起こることが分かったのです。

ホルスタイン種の牛(3~7年齢)6頭に、大麦搗精粕1.2kgを隔日で食べさせたところ、摂取開始2週間程度で唾液中の抗体量が増加。摂取をやめると元のレベルに戻りました。

これらのことから、大麦穀皮由来のリグニン配糖体および大麦搗精粕は、牛の全身および粘膜面で、免疫活性を賦活すると考えられます。今後、大麦搗精粕を原料とする家畜飼料が、家畜の疾病予防に寄与し、酪農業へ貢献することが期待されます。キリングループは、今後も、副産物の有効利用をさらに推進し、地球環境保全に貢献する研究および事業展開に取り組んでいきます。

学会発表

本研究は、2011年3月に開催された日本農芸化学会2011年度大会で、トピックス賞を受賞しました。

  • 「大麦搗精粕由来新規TLR4Lリグニン配糖体の発見(1)」日本農芸化学会2011年度大会 2011年3月25日~28日
  • 「大麦搗精粕由来新規TLR4Lリグニン配糖体の発見(2)」日本農芸化学会2011年度大会 2011年3月25日~28日
  • 「大麦穀皮由来セルラーゼ処理リグニン配糖体のmDC活性化効果」第152回日本獣医学会学術集会 2011年9月19日~21日
  • 「大麦穀皮由来リグニン配糖体のマウスにおける作用機構の解明」第152回日本獣医学会学術集会 2011年9月19日~21日
  • 「ウシにおける大麦穀皮由来リグニン配糖体および大麦搗精粕の免疫賦活効果」第152回日本獣医学会学術集会 2011年9月19日~21日
  • 「乳牛における大麦穀皮由来リグニン配糖体および大麦搗精粕の免疫賦活効果」第15回日本乳房炎研究会 2011年10月14日

関連リンク

  • 組織名は掲載当時のものです(2011年12月)